歯科衛生士として働く中で、より成長したいという思いからキャリアアップを望むのは素晴らしいことです。さまざまな経験を積み重ねることで、多岐に渡るキャリアアップが可能になります。今回は歯科衛生士のキャリアアップを実現するための方法や、キャリアアップして得られることについて解説します。
歯科衛生士としてのキャリアアップ方法
キャリアアップとは、経験を積み高い能力を身につけることで経歴を高めることを言います。より高度な職場で働くため、あるいは収入を増加させるためにキャリアアップは必要になります。
キャリアアップに向けて具体的な行動を起こすには、自分の理想とする将来像を明確にすることが大切です。将来どのように仕事をしたいのか、どのようなライフプランのもと働きたいのかを考えることで、キャリアアップを実現するための方法が見つかるでしょう。
歯科衛生士としてのキャリアアップを実現するための方法は以下の通りです。
- 資格を取得して専門性を高める
- 新しい分野で仕事の幅を広げる
- 現状で経験を積みスキルアップする
それぞれを詳しく解説していきます。
資格を取得して専門性を高める
国家資格を有する歯科衛生士ですが、さらに資格を取得することで専門性が高まりキャリアアップにつながります。資格の種類は、どのようなメリットがありどのように活用できるのかを考え選びましょう。例えば資格取得によって給与が増える、転職に有利になるなどモチベーションの向上するものが良いでしょう。
歯科衛生士のキャリアアップに役立つ資格には以下のようなものがあります。
- 日本歯科衛生士会認定歯科衛生士
- 日本歯周病学会認定歯科衛生士
- 日本口腔インプラント学会インプラント専門歯科衛生士
- ケアマネージャー
上記の資格の特徴を解説していきます。
日本歯科衛生士会認定歯科衛生士
特定の専門分野において、高度な業務実践の知識・技能を有すると認められた歯科衛生士のための資格です。この資格は分野や取得方法の違いで、認定分野A・B・Cの3つに分けられます。
認定分野Aでは、生活習慣病や摂食嚥下リハビリテーションなどの認定研修を受講し単位を取得します。その後選択した分野によっては実務研修を行い、審査に合格すると認定証が交付されます。認定分野Bでは障害者歯科や老年歯科などに関連した学会の審査を受けた後に、審査機関が審査・推薦を行い認定資格が交付されます。認定A・Bの資格取得には歯科衛生士業務経験が3年以上、そのうち各認定分野の実務経験1年以上が必要などといった条件が定められています。
認定資格Cは指導者として認められるための資格です。原則として都道府県歯科衛生士会会長あるいは所属長の推薦が必要です。さらに講習会を受講するためには、歯科衛生士の専任教師・臨床実習施設の指導教員など指導者としての業務を日頃から行なっている必要があります。指導者に関する講習を受講した後に審査を通過すると、認定資格を得ることができます。
いずれも歯科医療の専門分野において高度な知識や技術を得られるため、キャリアアップに繋がりやすい資格と言えるでしょう。
日本歯周病学会認定歯科衛生士
歯周病の予防と治療のための専門知識・技術を有する臨床歯科衛生士を育成し、地域医療に貢献することを目的とした資格です。資格を申請するためには、通算3年以上歯周病治療に関わっている、研修単位を30以上取得しているなどの条件を満たす必要があります。書類審査では歯周病患者の5症例分の記録を提出します。そのうち1症例のプレゼンテーションを行い口頭試問を受け、それらが認められると認定資格を取得できます。
日本歯周病学会認定歯科衛生士は、研修の他にも症例の記録を提出したりプレゼンテーションを行なったりと簡単に取得できる資格ではありません。しかし多くの患者が罹患する歯周病に関する資格を持つことは、自身のキャリアアップにつながるだけではなく患者や歯科医院にも貢献できるのではないでしょうか。
日本口腔インプラント学会インプラント専門歯科衛生士
インプラント治療に関する専門的な知識・技術の獲得を目的とした認定資格です。申請の条件は、3年以上インプラント治療の介助またはメインテナンスに携わっていること、講座を2回以上受講していることなどが挙げられます。資格取得には、インプラント治療を行なった3症例の口腔内写真や症例報告書などを提出する必要があります。書類審査を通ると、症例についてのプレゼンテーションと口頭試問が行われ、合格すると資格が取得できます。
インプラント治療を行う歯科医院は今後も増えると予想され、インプラントに関する知識や技術を持つ歯科衛生士の役割は重要になっていくでしょう。
ケアマネージャー
介護を必要とする方が、その人らしい生活を送れるようサポートするための資格です。仕事内容は利用者やその家族と話し合い最適なケアプランを作成し、自治体や業者との調整を行うことです。歯科衛生士の場合、歯科医院などで5年以上かつ900日以上勤務していれば、ケアマネージャーの試験の受験資格が得られます。試験合格後は講義を受講し、実務研修を受けた後に資格を取得することができます。
ケアマネージャーは高齢化社会に伴い介護を必要とする方が多くなる中、今後さらに需要が増える仕事です。介護に関する知識だけではなく、人とのコミュニケーション能力も必要とされるためキャリアアップにつながるでしょう。
新しい分野で仕事の幅を広げる
自分の目指す将来像に近づきたくても、今の歯科医院では難しいということもあるでしょう。職場や職業を変え、新たな分野で経験を積むこともキャリアアップの1つの方法です。
例えば一般歯科に勤務していた歯科衛生士であれば、口腔外科・矯正歯科・小児歯科といったより専門的な歯科医院へ転職すると、仕事の幅が広がりキャリアアップが可能になります。またケアマネージャーとして介護施設や地域包括支援センターなどで働く、歯科関連企業に転職するなど新しい分野で仕事をすることも大きなキャリアアップとなります。これらは歯科衛生士として働いてきたことを活かしながらも新たな知識や技術が必要になるため、モチベーションを高く保ちながら努力していけるのではないでしょうか。
現状で経験を積みスキルアップする
キャリアアップは、必ずしも資格取得や新しい環境でしか叶わないわけではありません。できる業務の幅を広げる、経験を積み指導する立場になるなど、現状で能力を上げ歯科医院に貢献することもキャリアアップと言えるでしょう。また仕事を続けながら歯科衛生士会や研修に参加し、得た情報や技術を日々の仕事に還元するのも良いでしょう。こうした行いが評価され、スキルアップにつながることもあります。
歯科衛生士がキャリアアップすると得られること
歯科衛生士としてキャリアアップすることで、得られることは多くあります。
- 新たな知識・技術を得られる
- 仕事の責任が増しやりがいを感じられる
- 後輩の育成や全体を統括する重要な立場に就くことができる
- 給与が上がる
キャリアアップすると、上記のことを得られるばかりではありません。何よりキャリアアップのために努力や行動したことは、歯科衛生士としてだけではなく自分自身の大きな成長につながるでしょう。